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「ミニマルダンス計画決意文」

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【ミニマルダンス計画決意文】

暗黒舞踏、天井桟敷、カントルには一瞬にして心を奪われた。しかしその憧れは情動で、わたしの早る心は長続きしなかった。 『ミニマル』の無意味さには、それまであったグロテスクやエロティシズムやカルトも幻想もなく、食べたことのない食材に直面したように戸惑った。しかしこの愚直は虜になる。ここまで気のきかない正直には平伏して、とうとう『ミニマル』運動加担犯としてダンスした。以後29年間、わたしは今だ生まじめな『ミニマル』信者である。最近では油臭い白化粧や流行り歌など不必要な過剰さを雑えているが、朝寝坊した人に「早起きですね」とわざと言うように、真意はほのめかしたいのである。またそれが巧くいかない点も大切である。 今さらなにも『ミニマル』とうたうのは時代遅れでも、一番に尊ぶ作業を丁寧に溶かして、過去も未来も抱いてあたかもあかるい。

黒沢美香(2009年記述)

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